大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1839号 判決

被告人 成基碩

〔抄 録〕

なるほど、記録によれば、原審の裁判に関与した裁判官深谷茂は、本件についての公訴の提起前被告人に被疑事実を告げ、これに関する陳述を聴いて勾留状を発したこと、及びそれ以来これが勾留に関する処分に終始関与し、殊に、本件についての公訴の提起後原審第一回公判期日までの間に被告人の保釈の請求を却下する旨の決定をしたことが窺われるが、深谷裁判官のこれら勾留に関する処分の事実があるからといつて、それが、除斥ないしは忌避の理由とならないことは勿論、同裁判官による原審の裁判が、憲法第三十七条第一項に違反するものでもなく(昭和二四年(れ)第一〇四号昭和二五年四月十二日最高裁判所大法廷判決参照)、而も、単に裁判官の審判に関する予断防止に出でたにすぎない刑事訴訟規則第百八十七条第一項但書の規定の趣旨に照らすときは、同裁判官において原審第一回公判期日前事件の実体について特に詳細な取調をしたこと等により同裁判官をして事件につき予断を懐かしめるに至つたというような事跡の記録上毫も認め得るに由のない本件においては、同裁判官は、前示の如き勾留に関する処分に関与しながら原審裁判に関与したからといつて、たとえ、その審判の関与が、同条第二項但書該当所定の例外事由に該当する場合でなかつたとするも、同条第一項但書違背の事由をもつて、原判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があるということはできない。所論は採用し難く論旨は理由がない。

被告人に対する起訴状の送達と第一回公判期日との間の猶予期間については、刑事訴訟法ないしは刑事訴訟規則の直接規定しないところであるが、被告人に対する第一回公判期日の召喚状の送達は、起訴状の謄本を送達する前にはこれをすることができない旨の刑事訴訟規則第百七十九条第一項の規定や、第一回の公判期日と被告人に対する召喚状との間には少くとも五日(但し簡易裁判所においては三日)の猶予期間を置くべき旨の同条第二項の規定等に照らし、被告人に対する起訴状の謄本の送達と第一回公判期日との間の猶予期間として少くとも五日但し簡易裁判所においては三日であるべきことが自ずから明らかであるが、一方、若し、その起訴状謄本の送達が第一回公判期日に為され、右猶予期間を置くことなくして事件の審判が為されたとするも、被告人において、これが期間を置かないことについて、何等異議を述べるところがなかつた場合は、同条第三項の規定の趣旨に照らしても、その手続に法令の違背があるということはできない。これと異る立論の下に原審の手続を非難する所論は採用するに由なく、論旨もまたその理由がない。

(三宅 河原 下関)

註 本件破棄は量刑不当

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